贄の町 総評
「俺はどうしてこんなところへ来たんだ?」
十代で家族を亡くし、今はガテン系バイトを掛け持ちして暮らす主人公の日天。
バイト漬けの日々を送っていたある日、暗い路地に入って行く喪服の青年に目を引かれ、彼が白い花束を落としたことに気づく。
放っておけず、思わず花束を拾ってあとを追う。
しかし、暗く長い路地を抜けた先で青年を見失った日天は、気がつくと、異界の入り口に――「宿」に立っていた。
呆然とする中、宿の住人たちに迎え入れられ、聞かされる。
そこは、死が遠い世界だと。
頭を潰されても喋る男に、自分の生首をボールにして遊ぶ子供。
そして、恐ろしい異形たち。
そんな不気味なものたちがうごめく世界へただ一人の生身の人間として迷いこんだ日天は、元の世界へ帰ろうとするが、その道はどこにもない。
それでも日天は、宿の住人の力を借りて、帰還する方法を探す。
生者の匂いに群がる死者たちが住むという「町」へ乗りこんで――。
命がけの捜索の果てに、日天が見つけたものは……?
<システム・グラフィック>
システム……☆☆☆
普通のBLゲームレベルだと思います。
発売当初にプレイされた方の感想ブログだと誤字脱字やボイスとテキストの食い違い等が多発していたと書かれていますが、今だと修正パッチを当てられるので大丈夫です。当ててプレイしたら目立った間違いは見当たりませんでした。
特筆すべきは、立ち絵の使い方が非常にうまいこと!
キャラが通り過ぎる時は立ち絵も右から左へ通り過ぎ、後ろへ隠れる時はそのキャラの立ち絵が後ろへ隠れ、こっそり消えるときはぴょこぴょこ消えて……バリエーションが豊かでとってもよかったと思います。他ゲーでもこういう使い方してほしい!
バックログからの巻き戻しがないのが難点……って言いたいところですが、今のところあるBLゲを見たことがないので、BLゲだとこれもデフォなのかもしれませんね。
あとはシーン回想がないのがマイナスかな。せめてスチルのあるところにはついててほしかった!
グラフィック……☆☆☆☆
キャラデザの方が立ち絵も原画も描かれてるのかな? 安定してきれいでした!
個人的に、しっかりした手を描かれるのが滅茶苦茶ポイント高かったです。
立ち絵はそこまで多くないのですが、スチルの差分が滅茶苦茶多いのが特徴。1スチルに対して30枚以上の差分があるところもあります。1テキストごとに変化してるんじゃないか!? ってレベルで臨場感がすごい。
特にスチルの表情の変化が細かくていい味出してたなあと思います!
ただ、淡い色味+すっきり系の絵柄であるため、申し訳ないんですがプレイ前は各キャラの見分けがつきにくいな~って思ってました。
プレイ後は全く思わなくなるし、この作風からいうとほんとにぴったりではあるんですが……。
逆に言うと絵があっさりしすぎかな~見分けつかないな~って思ってる方、プレイすると全く気にならなくなりますよ! わたしが実際そうだったので!
音楽……☆☆☆
可もなく不可もなくかな?
宿の基本BGMは頭から離れなくなりますw
<ストーリー・キャラクター>
ストーリー……☆☆☆☆☆
主人公・日天が目の前で落とし物をした「喪服の男」を追っていくと、見知らぬ町に到着してしまう。なんとそこは死人(or幽体離脱者)の世界で、日天はなぜかそこへ生きたままやってきてしまった。元の世界へ帰るため、宿の住人たちと協力して方法を探すが……といった話。
共通も個別も短めですが不足感はなく、綺麗にまとまっています。
「死人の世界」の時間が止まったような独特の空気感がすごくいいゲームでした。
主人公に「狙われやすく再生のできない唯一の生身」というディスアドバンテージがあるせいで「守られる」「一緒に過ごす」という状況が自然に形作られているのも◎。
主人公及び各攻略キャラが抱える謎も、綺麗に出てきてきれいに解決します。
唯一、終盤の主人公に関する謎解き展開だけが判子なのと、判子なのに既読スキップできないのが難点かな。
ホラーテイストの話なのでそもそもの世界観が不気味だし、エロもグロもそこそこどぎついものが出てくるのが特徴。
一般的に「地雷」と呼ばれるだろう要素が数多く取り入れられています。
反転で書きますので、地雷持ちの人はご確認ください→サブキャラを相手とした攻略キャラ(攻)の受化・触手(ボテ腹・体内貫通あり)・モブレ・死姦・カニバ・欠損(両脚・片目)・傷跡・幼児退行・嘔吐・喉姦
あと流血表現は普通にいっぱいあります。
ただ絵柄があっさり系なのでエグみはあんまりない気がしました。
キャラクター……☆☆☆☆
主人公の日天は常識的でいい子なタイプ。そして二十歳の成人男性とは思えないくらいのピュアさを持ってますw まっすぐな子なので好きになりやすいと思います。ガテン系らしいですが唯一生身であるせいで登場人物中最弱なので、ガテン設定はあんまり生きてないなと思いましたw
わたしはBLゲプレイ歴が浅いのでわからなかったのですが、BLゲの受け主人公としては声がかなり低いのが特徴的だそうです。でも喘ぎ声とかは可愛かったですよ!
攻略キャラは4人。
あすく…ツンデレ
ココ…ママ
笑男…チャラ男
成臣…優等生
まああくまで初見の印象だけどね。実際の彼らはプレイしてお確かめください……w
好きキャラは 笑男>越えられない壁>あすく>成臣>ココ 他が悪いというわけではなく笑男がツボを抉ってきすぎた。ほんとタイプどどどどどストレートで……。喋り方もずるいんですよね~!!! なんだろうな、声を入れてるというか「笑男という人間はマジで存在してるんじゃないか?」って思えるような演技なんですよね。
ルートは甲乙つけがたいほどどれもよかったです!
攻略順はシナリオの真相を重視するなら成臣を最後がおすすめですが、真相を知ったからと言って他のキャラシナリオに影響が出るわけではないので、個人的には好きな順でOKかと思います。
なんというか……性癖ぶち込みまくりましたって感じのゲームで、個人的に非常に好感が持てました!
プレイ内容とかBADエンドは色々煮詰まってるんですが、シナリオは割と王道めなので馴染みやすいかなとは思います。
あと文章と絵にえぐみがないので、内容の割に受け止めやすいかなと。
シナリオが急すぎるとか、尺が足りないとかいうことは一切なくて滅茶苦茶よくまとまってはいるんですが、いかんせん面白すぎるせいかちょっと短いと感じてしまうのが難点らしい難点ですかね。ちょっとボリュームは控えめなので……。
でも本当に面白くて。なんと2日でフルコンしてしまいました!w
該当時期に出会えていたら、是非クラウドファンディングにも参加したかった……。
アペンドディスクも滅茶苦茶楽しみです!